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脳は、私たちのほとんどあらゆる活動をコントロールしている司令塔です。それがうまく働かなければ、精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなります。
認知症とは、脳に起きた何らかの障がいによって、すでに獲得されていた知能が低下し、日常の生活に支障をきたす状態をいいます。
認知症の原因で最も多いのは、アルツハイマー病です。アルツハイマー型認知症は、原因不明の脳の萎縮により、脳の神経細胞が減少していくために起こるもので、ゆっくりと進行していくという特徴があります。
次に多いのが、脳梗塞や脳出血などのため、脳の神経細胞や組織に障がいが起きて血液の循環が阻害されることで起こる脳血管性認知症です。
認知症の主な症状には、記憶障害を中心に見当識(日時や場所、人物などを理解すること)、理解・判断力の低下、実行機能の低下などがあり、そのために、周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなります。
年をとって物忘れをしたりすると「認知症になったのでは・・」と心配に思うことがありますが、老化に伴う単なる「物忘れ」と「認知症」とは違うものです。
例えば、「朝ごはんのおかずは何だったっけ?」と、食べたものが具体的に思い出せないことがありますが、これは単なる物忘れです。しかし認知症による記憶障がいの場合は、食べたこと自体を忘れたり、忘れたことに対する自覚がなかったりします。
症状の違いを理解し、認知症の兆候を見逃さないようにしましょう。
今まで出来ていたことができなくなり、「何かおかしい」と感じ始めます。できなくなることが徐々に増えて失敗が続くと、それがきっかけで閉じこもってしまう人もいます。
認知症の人は何も分からないのではなく、悲しみや不安を感じています。その気持ちを受け止め、「大丈夫だよ」と一緒にいてくれる家族や地域の方々の理解と協力が大切です。
「病院に行く必要はない」と家族を困らせることがあります。これは、認知症であるという現実から自分を守るための自衛反応だと言われています。このつらい気持ちを、一番頼っている介護者にぶつけてしまうことが多くあります。
介護者は一人でがんばらず、周囲の人に相談したり介護サービスの利用をしたりしながら、介護者自身の時間や健康を大事にしましょう。
認知症になっても、『その人らしさ』『豊かな感情』『生活の知恵』など残っているものはたくさんあります。
認知症という病気は、その人の一部であってすべてではありません。地域の身近な人たちとの普段どおりの付き合いが本人と家族にとって何よりの支えになります。